劇場版レヴュースタァライト②ー1 何のために何をその手に持つのか~まひる編

※ 映画の感想です。本記事の一部ネタバレ(というか内容)を含みます。

※ 現時点では、劇場版、TV版、ロンド・ロンド・ロンドだけを鑑賞済み。ミュージカルやインタビュー、メディア記事などは観ていない状態で書いています。

1.はじめに

劇場版レヴュースタァライトは(TV版など全く知らずに)初見で観ると、何が起こってるのかほとんどわからなかった人がほとんどだと思います。緻密な分析や比較をせずとも、何かがある物事を表現してるのかもしれない、と思える物や発言や場面が多くあります。例えば、
  • トマト
  • 「しゃべりすぎ」、「なんで/だから、あいつだけ」
  • 華恋ちゃん、あなた死んだはずでは……
などなど。

観れば観るほど、いろいろな部分で「これは~じゃないか」「あれは~じゃないのか」と妄想が無限に膨らむ素晴らしい映画なので、ぜひ何度も観に行って、スタァライトするのがいいと思います(もう上映終わりますが……)。本エントリでは、彼女たちの戦闘シーン(レヴュー)で戦う際に持つ武器を見て考えられる解釈(妄想)を書いていきます。

2.彼女たちは何を手にしているのか

現実の武器や防具だけではなく、創作上のファンタジーなどで登場する武器などに関する書籍を読めば、武器としての特徴・性質だけではなく、儀礼的に使用された場合に何を表しているかという象徴性についても書かれています。ですが、ここでは外部の文献を参考にせず、本稿の一番上に書いた通り、作品を見てわかる部分だけに注目します。また、9人分すべてに踏み込むわけではないのでご了承ください。というか、そもそも監督のインタビューや雑誌の特集ですでに完全解明されている可能性が大いにあります

劇中では、彼女たち9人はそれぞれ異なる武器を持ちレヴューをします。また、彼女たちの武器にはそれぞれ異なる色の宝石のようなものが埋め込まれています。具体的には次のように、武器と宝石の色(と付いている場所)があるのがわかります。
  • 双葉:ロングアックス(槍斧?) ― 紫(柄と穂(刃)の間)
  • 香子:薙刀 ― 紫(柄と穂(刃)の間)
  • まひる:メイス ― 水色(先端)
  • 純那:弓矢 ― 緑(弓の上端(和弓なら「末弭」でしょうか))
  • なな:日本刀(大太刀、小太刀) ― 黄(柄の端)
  • クロディーヌ:剣 ― 白/透明(刃の付け根)
  • 真矢:剣 ― 白(柄の端)
  • ひかり:ダガー(ひも付きのリング・ダガー?)(ロンドンのオーディションでは剣) ― 青(刃の付け根)
  • 華恋:剣 ― 赤(握りと刃の間)
「剣」「刀」の違いについては、ここでは触れません。それぞれが何を象徴しているか、踏み込んでいくとわかるかもしれません。

気になったのは、個々の武器の違いというより次のような「種類」の違いです。
  • 刃物:双葉、香子、なな、クロディーヌ、真矢、ひかり、華恋
  • 鈍器:まひる
  • 弓矢:純那
初見のときは、「メガネの子、あの中で弓矢なんか持たされてかわいそう」なんて思っていました……。

3.何が問題なのか

TV版/ロンド・ロンド・ロンドでは、彼女たちのレヴューの勝敗は「相手より舞台で輝くこと」=「相手の上掛けを落とすこと」で決まりました。したがって、戦闘面では、上掛けを落とすために、それを留めている星(ボタン)あるいはそれを留めている紐を切り落とす必要があります。

勝敗がそのように決まる以上、剣や日本刀といった刃物が最も有効になります。ですが、そう考えると「おや?」という方が二人います。まひるちゃんと純那ちゃんです。まひるちゃんのメイスは「鈍器」です。メイスは相手を殴り倒すための武器で刃は付いていません。「でも劇場版でひかりちゃんの星を弾いていたでしょ」と思うところですが、このルールでは不向きな武器であることには変わりません。一方、純那ちゃんの矢には刃が付いていますし、TV版第1話でひかりちゃんの星に矢を当て追い詰めていたものの、このルールでは星(あるいは紐)を直接弾けない弓矢は圧倒的に不利なわけです。実際、TV版でも劇場版でも純那ちゃんが相手の星を弾いたシーンは一度もありません。問題は二人が最初になぜメイス/弓矢を持っていた(持たされていた)のか、です。

3.1.まひるちゃん

まひるちゃん

(怒られたら消します)

〇 TV版/ロンド・ロンド・ロンド

まひるちゃんだけ、なぜ鈍器を持っているのか。(劇場版の感想と言いながら)これは一度TV版に戻ってみる必要がありそうです。まひるちゃんは華恋ちゃんと地下劇場でレヴューをした際、こう話しています。

 私はもういらないの。歌もバトンもこの学校も、おばあちゃんに言われたから始めただけ。私には何もないの、自信も才能も煌めきも。

バトンをやっていたんだからそれっぽい武器でメイスでいいじゃないか、とも言えますが、
、このセリフの前に彼女はこうも言っています。

 元に戻ってよ、神楽さんが来る前の華恋ちゃんに。お寝坊してよ、遅刻してよ。また私にお世話焼かせてよ!

まひるちゃんは、以前のような(ひかりちゃんが来る前のような)華恋ちゃんに戻って欲しい(注:煌めきのある華恋ちゃんをひかりちゃんに取られることは、自分の存在意義に関わる、とこの時は思っている?)、その一点でレヴューをしていたと言えます。つまり、彼女はオーディションで優勝してトップスタァになることは考えていなかった、だから、相手の上掛けを落とすための刃物は必要がなかったのではないのでしょうか(戦闘中にバトンを回す動作もしているので、バトンが意識されていることは間違いなさそうです)。

もちろん戦意がないわけではなく、華恋ちゃんとレヴュー(戦闘)はしていました。それに、舞台少女として参加資格があるとキリンが認めていたからこそレヴューに参加しています。

〇 劇場版

劇場版ではこの鈍器が遺憾なく発揮されます。レヴュー相手はひかりちゃんですが、彼女はちゃんと演技をしてくれません。まひるちゃんは、あっさりと彼女の星を弾き飛ばします(なぜここでレヴューが終わらないのかについては別稿にて)が、そこで完全に据わった目で静かにこう言います。

 舞台の上で演技しないなら、何されても文句は言えないよね

このセリフの途中、まひるちゃんはメイスを地面に叩きつけます。重く硬い音が響き、亀裂の広がった地面が砕けているのは印象的です。このあとのひかりちゃんをじりじりと追い込むまひるちゃんの演技は、刃物的な鋭さではなく、強い意思や想いを叩きつける重く硬い鈍器がぴったりだと感じました。

また、双葉/香子のレヴューで新国立第一歌劇団の受験を香子に相談せずに決めた双葉が香子に詰められるシーンでも、双葉ちゃんがまひるちゃんについてこんなふうに触れています。

 “足りてないってわかったんだ。まひるの腹の据わり方とか……

まひるちゃんは柔らかく朗らかな一方、こういう内面を他のみんなも感じていたことからも、鈍器という武器が選ばれていたのではないでしょうか。

長くなったので、3.2節、純那ちゃん死闘編以降はこの後に。

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